ぬいぐるみ作家 ばんばぱえりあさんに聞いた「つくりはじめたらやめられない、魅力を詰め込み、かたちにする手仕事」
ばんばぱえりあさん
Banba Paella
ぬいぐるみ作家
ぬいぐるみと聞くと、どんなイメージが浮かびますか?子どものころのお守りのような存在、あるいは部屋を彩るかわいい雑貨——そう感じる方が多いかもしれません。ばんばぱえりあさんのぬいぐるみは、そのイメージを超えた「立体作品」。 ぬいぐるみ作家として作品発表するだけでなく、書籍の出版や清原『推しぬい』ブランドからのキット発売など幅広く活動を展開するばんばぱえりあさんに、可愛らしいぬいぐるみたちが生まれるアトリエスペースで"つくる"について伺いました。
目次
※内容は取材当時のものです(取材日 2026/3/5)
ぬいぐるみ作りはやっぱり楽しくて、やめることは考えられない
ばんばぱえりあさんにとって、ぬいぐるみの魅力は何でしょうか。
ばんばぱえりあ
3次元に存在し、ふわふわしていて、大体は可愛い見た目をしている愛らしい存在っていうのがぬいぐるみの魅力かなと思います。
ぬいぐるみは娯楽的な要素が強いので、私のぬいぐるみづくりにおいては、可愛い存在であることは意識していますね。
家族が必需品的なものづくりをしていることもあって、ぬいぐるみの立ち位置について悩んだこともありましたが、最近は胸を張って「可愛いぬいぐるみをつくるぞ」という気持ちで制作しています。
あとは、ぬいぐるみが小さいお子さんや女性だけに留まってほしくないなと思っていて。これは自分が彫刻科出身というのも大きいのですが、ひとつの立体作品として面白いものができるといいなと考えています。可愛いことはもちろん、立体としての面白さも大切にしながら制作しています。
ばんばぱえりあさんぬいぐるみ作品
左から「モモンガ、エゾリス」
ぬいぐるみ作品をつくり始めたきっかけを教えてください。
ばんばぱえりあ
きっかけは(有)小峰玩具製作所に就職してからです。ぬいぐるみ部門に配属されて勉強しました。高校や大学では舞台のサークルに入っていて、衣装や小物を縫うことはあったのですが、工業用ミシンを踏んだのは会社に入ってからが初めてでした。
その後、会社の製造部門が閉鎖されることになりましたが、ぬいぐるみ作りはやっぱり楽しくて、やめることは考えられなかったんです。
個人でも続けていきたいと思い、最初は趣味というか、ダブルワークのような形で活動を始めました。
アトリエ内のミシンスペース、学生時代より使用しているジャージ
ぬいぐるみとしてあまり世の中にないものをつくりたい
ばんばさんの作品に込められているものは何でしょうか。
ばんばぱえりあ
生き物をモチーフにすることが多いので、動いている生き物が、止まっているぬいぐるみになったときに、その魅力がぎゅっと詰まったものになるといいなと思って作っています。
ばんばぱえりあさんのぬいぐるみ作品
左から「チンチラ、キウイ、スベスベマンジュウガニ、モフモフマンジュウガニ、モモンガ、アオアシカツオドリ、えぞこだぬき、ライチョウ、カカポ、エゾリス、ナキウサギ」
ぬいぐるみをつくる際のモチーフの選定方法を教えてください。
ばんばぱえりあ
私はぬいぐるみとしてあまり世の中にないものをつくりたいと思っていて「この動物がぬいぐるみになったらどうだろう」という気持ちで、ちょっと珍しい動物モチーフを選ぶことが多いです。
最近はSNSや子どもの図鑑を見て、「こんな動物がいるんだ」と興味を持って、動画などで動いている姿を見ながら、どう形にするかを考えています。
動いているものを止まったものに落とし込む作業は楽しんでやっていますね。
作品用のストック生地
ぬいぐるみづくりを広める活動はどのように考えていますか。
ばんばぱえりあ
ぬいぐるみづくりの本をつくる作業はとても楽しかったですし、今後も本にする作業はできる範囲で続けていきたいと思っています。個人的な思いとしては、本が出版されると国立国会図書館に1冊収蔵されるので、型紙がそこに残ることにはロマンを感じていますね。
また、ぬいぐるみという立体をつくるには、手元で実際に見せながら伝えるのが理解されやすいと感じています。目の前でつくり方を見せたり、話しながら紹介する機会を大切にしたいです。
書籍では伝えきれない工程の細かい動きや、つくるときの空気感は、目の前で見せることでより伝わると感じています。オンラインでの解説もできたらいいなとは思っていますが、本当に時間が足りないって感じていますね。
ぬいぐるみの型紙
つくることを確保するために、どうするかをずっと考えている
ばんばぱえりあさんにとって「つくる」とは何ですか。
ばんばぱえりあ
私の人生においては、「つくる」がないことは考えられないです。
やりたいことは山ほどありますが、つくるには時間がかかるので、その時間を確保するために、どうするかをずっと考えています。
他の大切なことと同列に、自分にとっては大切な立ち位置です。私はどちらかというと消費する喜びより、つくっている方が喜びが大きいのかなと思っていて、自分の楽しさのためにつくっている気はします。
ぬいぐるみをつくるばんばぱえりあさん
ぬいぐるみ以外に興味のある「つくる」はありますか。
ばんばぱえりあ
手芸のジャンルでいうと、羊毛フェルトはずっとやりたいと思っています。ただ、ぬいぐるみでつくりたいものが尽きないので、後回しになっているのですが。
あとは料理が昔から好きで、大衆料理や大量調理にも興味があったので、小峰玩具を辞めてから数年間は、食堂で働いていたこともありました。手作業で何かをつくるのは、やっぱり好きなんだと思います。
手芸やぬいぐるみ作りができない時は、料理で発散することもありますね。掃除はあまり得意ではないんですけど(笑)。
いつも使用されている道具
針の太さの号数で分けた針山
つくるときに欠かせないものはありますか。
ばんばぱえりあ
何かつくりたい気持ちは常にあるので、あまり意識していなかったのですが、強いて言うならモチベーションが一番大切だと思います。時間も必要ですが、時間に関しては無理矢理に捻出している感じですね。
ぬいぐるみをつくるようになってからは、つくりたいものが絶えず浮かんできます。「これをぬいぐるみにしたらどうだろう?」と常に考えていて、タイミングが合わないとやめてしまうこともありますが、つくりたい気持ちはいつも消えないです。
平面が立体になる感覚を楽しんでもらえたら嬉しい
つくるを通して新たに発見はありますか。
ばんばぱえりあ
ぬいぐるみづくりでは、私はまず粘土で原型をつくり、その原型に生地をあてながら、形を整える「立体裁断」という手法で型紙を制作しています。
立体から始めるので、型紙になった時に「こうなるんだ」という新しい発見は今でもありますね。
粘土の立体を型紙に落とし込む過程は、立体の展開図をつくるようなものとも言えます。型紙やキットを手にした方にも、ぬいぐるみ作りを通して、平面が立体になる感覚を楽しんでもらえたら嬉しいですね。
清原『推しぬい』書籍とのコラボレーションキット
「ことりのぬいぐるみキット」 / 「げっしるいのぬいぐるみキット」
つくるを通して感情の変化はありますか。
ばんばぱえりあ
やっぱりできた時の達成感が楽しくて、つくり続けているのかなと思います。思い通りにならない時は「どうしよう」と悩むこともありますし、苦手な作業は「嫌だな」と思いながら進めることもあります。でも結局ゴールに向かって頑張っちゃう感じはありますね。
ぬいぐるみづくりは、スムーズにいけば完成までに2〜3回、最近は3〜4回が多いです。つくり始めたころは、9回やり直したこともありますが、経験を重ねるうちにやり直す回数は減ってきました。
ぬいぐるみ「ラッコ」の完成から原型
日本人のつくる「可愛い」という感性
ばんばぱえりあさんの今後の展望を教えてください。
ばんばぱえりあ
作家として作品をつくり続けていきたいともちろん思っていますが、講師としてぬいぐるみづくりを教えることにも力を入れていきたいです。
海外のぬいぐるみも魅力的ですが、日本人のつくる「可愛い」という感性も魅力的だと思うので、つくれる人が少しでも増えるといいなと思います。
会社廃業の流れを見てきた身としては、今の日本で工場や職人を復活させることは難しいなと思っていて。ぬいぐるみづくりを仕事にするのは難しい道のりだとは思いますが、とにかくつくる人口が増えると何か新しいことが起こるかなと思うので、まずは趣味から。
ここ数年で「ぬいぐるみをつくれる」ということが広まってきたので、それをもっともっと盛り上げていけたらいいですね。
ばんばぱえりあさんぬいぐるみ作品
左から「リス、モルモット、ハムスター、チンチラ」(キット仕様)
手芸についてどのようなイメージをお持ちですか。
ばんばぱえりあ
お母さんやおばあちゃん世代の趣味というイメージが強かったのですが、実際にやってみると、さまざまな作品や手法があり、立体作品としても面白いものが沢山あるなと思っています。老若男女問わず、もっと多くの人が楽しめるものであってもいいのかなと思います。
かっこいいと思う手芸道具はありますか?
- 裁ちばさみ「庄三郎」の裁ちばさみで、結構大きいのですが、それが好きです
好きな手芸の素材はありますか?
- ボア生地毛足のある生地がときめきます
つくっている時のお供はなんですか?
- YouTube型紙制作など頭を使う作業の時は音楽、手を動かすだけの作業時は雑談系の動画。誰かと作業通話することもあります。
ばんばぱえりあ
Banba Paella
幼少期より、絵画や工作に親しみながら育つ。大学では彫刻を学び、ハンドメイド作品などからイベント出展をスタート。ぬいぐるみ老舗メーカーの㈲小峰玩具製作所にてデザインとパターンを学び、廃業を機に独立。近年はぬいぐるみ制作の技術を広める活動にも注力、オンライン講座やイベントにて講習なども行っている。書籍『げっしるいのぬいぐるみ』などぬいぐるみづくりに関する著書多数。
https://banmof.net/ https://x.com/banmof https://www.instagram.com/banmof_/聞き手:田口
もくもくと作業できる手芸が好き。
職人技や手仕事にあこがれている。
編 集:渡辺
手芸初心者。
あらゆる手芸を少しずつかじって楽しんでいる。




