つくるを考えるインタビュー

みのや扇舗 千葉晃治さんに聞いた「閉じて使う扇子と広げて使う扇子、昔から変わらない形を視点を変えて作り続ける方法」

みのや扇舗

千葉 晃治さん
Koji Chiba
「みのや扇舗」扇子職人

京都・岡崎近くの住宅街に、茶道用の扇子の製造・卸販売を行う「みのや扇舗」がある。創業1894年。ショーウィンドウには季節に合わせた花と扇子が飾られてはいるが、通りがかりの人は、ここで扇子がつくられているとは思いもよらないかもしれない。職住一体の作業場に案内されると、手入れの行き届いた和風の庭が視界に広がる。落ち着いた畳の部屋に、整理された扇子の資材と道具。お茶用の扇子の製造・販売を130年続けながら、2017年には普段使い用の扇子「/fan/fun」を立ち上げた千葉晃治さんにとっての"つくる"を伺いました。

※内容は取材当時のものです(取材日 2023/6/23)

扇子屋が好きで扇子屋になろうっていうんじゃなく

130年近く、ご家族で伝統工芸を守っていることをどう感じていますか。

千葉

歴史となると、「そんな長いことやっているんだ」という感じです。僕が小さい時に祖父が亡くなり、家業としての扇子づくりは、父親の仕事というイメージでした。何代も続いているという歴史の重さは、正直感じることがなく。言葉が悪くなるかもしれませんが、「扇子が好きで扇子屋になろう」と思っていたわけではないです。「将来は扇子屋になる」と昔から周りが教えてくれていて、小さい頃からの夢は「扇子屋になること」。父母から「扇子屋になれ」といわれた覚えはないですが、小さい頃から自分は扇子屋になると思っていました。うちは家と仕事場が一緒の「職住一体」なので、家族が生活しているところで、父親が扇子をつくっている。僕が起きている間は、父は仕事をしていたし、父親の働いている背中をずっと見て育ちました。父親が扇子屋じゃなくて金属を扱っていたら金属を扱う仕事を継いでいたと思うし、たまたま僕の場合は扇子やったということです。

扇子はどのようにつくられるのでしょうか。

千葉

紙の扇子は、紙と竹でできています。竹は扇の骨と書いて、「扇骨(せんこつ)」といいます。うちの扇骨は滋賀県の北部、安曇川から仕入れてます。紙は「扇面紙(せんめんし)」といい、3枚合わせの紙でできています。端折って説明しますと、扇面紙に折り目を入れたものに、紙と紙の間に扇骨を差し込む穴をあけ、糊を塗った扇骨を差し込むと、扇子はでき上がります。扇子の骨は1番外側の骨「親骨」が上側に向かって内側にやや湾曲しています。この親骨を曲げることを「ためる」といい、ためてあるから、扇子を閉じた時に、収まりよくパチンという良い音がします。紙の扇子は、小さいサイズも大きいサイズも同じ工程でできています。先端についている銀色のリング状の紙は「セメ紙」といいまして、新しい扇子に付いています。これは封印のための紙ではなく、破らずに抜いて保管しておいてください。扇子は紙と竹でできていますので、使っていたら広がって元に戻ろうとします。その時にセメ紙を嵌めておいていただくと、癖直しになります。

金子

夏が終わったタイミングで付けたりとか、使わない間とかに嵌めておくのですね。

千葉

セメ紙は小さなものですので、失くしやすいです。失くした時はヘアゴムできつくし過ぎない程度に巻いてください。輪ゴムを使う場合は、ゴムが劣化して竹につきますので、紙を巻いてから輪ゴムをかけてください。セメ紙の説明は扇子には付いていないことが多いので知らない方が多いかもしれません。

紙の扇子、6.5寸、銀色の紙が「セメ紙」

紙の扇子、6.5寸、銀色の紙が「セメ紙」

いつ頃から扇子づくりに関わられてきたのでしょうか。

千葉

お手伝いとして、簡単な作業を小学校の2〜3年ぐらいからやっていたのかな。1番多かったのが紙と竹を付ける作業。1人がハケで糊を塗り、次に1人が紙の間に竹を入れて、最後に紙と竹を固定する。この作業は3人1チームが1番効率が良いです。僕は紙と紙の間に竹の骨を入れる作業をやっていました。姉がいるんですが「今日は僕な」「今日は姉ちゃんな」という感じで、取り合いしてました。お小遣いが貰えたんで。大学卒業後に、3〜4年ほど京都の着物の商社に勤めました。扇子屋と着物で狙ったわけではなかったんですが、同じ「和」ということで和柄について着物の柄で勉強することができました。西日本担当の営業マンでしたので、西日本は仕事として出張で毎月行ってました。いい経験をさせてもらったなと思ってます。

金子

子どもの頃の手伝いのお小遣いは、お幾らぐらいだったんですか。

千葉

1時間じゃなくて10分刻みぐらいで、何十円かだったと思うんですけど。

金子

小学2年生からしたら、お菓子が買える値段ですし、良いお手伝いですね。

文字と文字の間に折り目が入る扇面紙、折ったものを折地という。折ると文字が隠れるようにデザインされている

文字と文字の間に折り目が入る扇面紙、折ったものを折地という。折ると文字が隠れるようにデザインされている

扇骨に糊を塗る

扇骨に糊を塗る

扇面紙の穴1カ所ずつに、扇骨1本ずつを差し込んでいく

扇面紙の穴1カ所ずつに、扇骨1本ずつを差し込んでいく

お茶用の扇子は「開けない扇子」

京扇子は分業制でたくさんの職人の手を通って完成しますが、みのや扇舗さんはどの工程を担っておられますか。

千葉

みのや扇舗は仕上げ、紙と竹を付けて扇子の形にする工程です。問屋業もしてますので、自分のところでつくる扇子は、デザインをして、図柄を上絵屋さんに出して扇面紙に加工していただく。印刷の終わった扇面紙は、折り屋さんに折ってもらいます。扇面紙を折り型に合わせて型を付ける作業です。折り作業をいれると、折った時に文字が見えなくなります。これが1枚ではなくて10枚、100枚、1000枚、何万枚折ろうと同じように折りが入るようにしていただいています。お茶用の扇子は「開けない扇子」というと「何それ」という感じになるんですが、茶道用の扇子は広げて使うものではなく、閉じた状態で置いて使います。つくるときは、閉じ姿が綺麗な扇子であるようこだわっています。昔から開けることは少ないですが、広げたときの扇子の図柄は四季折々のものや、次の年の干支の柄を毎年作っております。

金子

今は初夏ですが、これから来年の干支の扇子を作られるのですか。

千葉

干支の扇子は「新年扇」といいます。新年最初のお茶のお稽古「お初釜」で、お師匠さんが来ていただいた方にその年の干支の扇子を配る風習がありまして。これから来年の干支である辰年の扇子の製造を始めます。

金子

粋な風習といいますか、素敵な風習ですね。

千葉

うちにとってはありがたい風習です。

金子

夏の扇子とは製造サイクルが違うというお話が先ほどありましたが、どのようなサイクルですか?

千葉

夏の扇子は、パタパタ扇ぐ扇子です。夏の扇子は風がたくさん送れるように、お茶用よりも骨がたくさんあります。骨は多いですが、同じ紙の作り方で、紙と紙の間に竹の骨が入っています。夏用の扇子は、4〜6月ぐらいに製造が終わって、全国に出荷されていきます。お茶の新年用の扇子は、年末の納めですので、7〜12月の下半期につくります。夏用の扇子は上半期に、お茶の扇子は下半期に重きをおいていますので、製造時期には差があります。

親骨は後で切り揃える

茶道用の扇子、柄は季節に応じた様々なものがある

茶道用の扇子

閉じた姿で使用する、茶道用の扇子

扇子を境にこちらからは私の陣地、あちら側はご亭主の陣地

お茶用の扇子「開けない扇子」をどのように使うのか教えてください。

千葉

茶道用の扇子は、流派によって大きさ等が変わってきます。裏千家流の女性は5寸(15cm)という大きさで、男性用になると6寸(18cm)です。京都の表千家流でしたら男女ともに6.5寸(19.5cm)。お茶の扇子は「結界」を表わす道具です。お茶の席でご挨拶の時に扇子を閉じた状態で自分の前に置いて、扇子を境にこちらは私、向こうは相手さんとして、扇子の前でご挨拶をします。ご挨拶のあとは後ろに仕舞います。使う時はそれで終わりますので、本当に茶道用の扇子でパタパタ扇ぐことはありません。扇ぐことがないから、大抵の方は傷まない。皆さんお茶の扇子をたくさんお持ちになられています。パタパタ扇ぐ方の扇子でしたら使っていくと傷んで、消耗されるのですが。お茶の扇子は新年にお配りいただくので、傷まなくても、お陰様で新しいものをつくらせていただいています。

金子

茶道を長くやられてる師範代の方は、たくさん干支の扇子を持っておられるということですよね。

千葉

干支は12年でひと回りしますので、こちらとしては毎年つくるので12個前の柄ですが、お茶の先生は「前の兎ね」「その前の兎ね」と、兎柄で3つぐらいお持ちです。3つ前の兎といっても、36年前ですので、こちらとしてはたくさん扇子をつくっているつもりですが、お客さんからしたら「兎の柄が2柄、3柄ある」ぐらいの感覚ですね。僕らとしては作り甲斐があるような、ないようなということになります。

金子

起きている間、朝から晩まで扇子を作られているんですか。

千葉

そんなに根を詰めてはやっていないです。家ですので「ちょっと出てくるわ」と買い物に行ったり、1日中キツキツではないですね。

金子

納期が近かったら「まとめてやっておこうか」みたいな。

千葉

本当に忙しい時だったら、毎日毎日、1日に何百本とやって、10月くらいからは缶詰になります。仕事が詰まりすぎて、注文のFAXがくることが怖いと思うこともありました。最近はそんな事がないのですが。

金子

左より、鳴らし木…折地の癖をとるために叩く道具、さし竹…折地の穴を開けたり、糊をつけて修繕するときに使う、折型…扇面紙を折る時に使用するもので芯紙に柿渋が塗られ耐久性・防水に優れている、糊板…紙と扇骨を引っ付ける時に使用、のり…でん粉製の糊、へら…糊板で糊をとく時に使う(竹製)、刷毛(ハケ) 紙と扇骨(竹製)を引っ付ける時に使用する

左より、鳴らし木…折地の癖をとるために叩く道具、さし竹…折地の穴を開けたり、糊をつけて修繕するときに使う、折型…扇面紙を折る時に使用するもので芯紙に柿渋が塗られ耐久性・防水に優れている、糊板…紙と扇骨を引っ付ける時に使用、のり…でん粉製の糊、へら…糊板で糊をとく時に使う(竹製)、刷毛(ハケ) 紙と扇骨(竹製)を引っ付ける時に使用する

今の仕事のやり方ではダメだと。先が見えている。

日常用の扇子ブランド「/fan/fun(ファンファン)」のブランド名の由来と経緯を教えてください。

千葉

2017年に立ち上げた「/fan/fun(ファンファン)」というブランドですが、いきなり「ブランドやろう」と立ち上げたわけではないんです。京都の職人さんが集まる「京都職人工房」という勉強会があって「今の仕事のやり方ではダメだと。先が見えている。もっと違うことにチャレンジしていこう」という志を持ってる、伝統工芸に携わる友達・職人さん仲間で勉強していました。僕は扇子の職人ですので、畑の違う器をつくるではなくて、扇子の技術を使った新しい商品開発をしようということになりました。茶道用の扇子ではなく、夏に使用する、普段遣いの扇子にチャレンジしようと。夏用の扇子はたくさん売られているので、これから古くからある古典文様の柄のものをつくるより、今まで扇子にしていない柄の扇子をつくろうということになりました。職人仲間に紹介していただいた京都のデザインユニット「niwa」のテキスタイル柄を使って、紙の扇子と扇子の袋を作って、パッケージングまでしたものを販売しようと。京都職人工房で勉強していなかったら、扇子だけを作った時点でゴールでしたが、そうではなく「扇子袋、パッケージの箱、商品イメージが要るよ」ということを勉強しました。「/fan/fun」というブランド名には、その時の講師、永田宙郷さんに命名してもらい、半分ダジャレで、パタパタ扇ぐ「fan」と愛好者の「fan」、楽しいの「fun」とファンキーの「fun」。fanとfunで「/fan/fun」というブランド名で立ち上げました。

2017年に立ち上げた「/fan/fun(UMO)」みのや扇舗で初めてパッケージまで企画した商品

2017年に立ち上げた「/fan/fun」

2017年に立ち上げた「/fan/fun(UMO)」みのや扇舗で初めてパッケージまで企画した商品

2017年に立ち上げた「/fan/fun(UMO)」みのや扇舗で初めてパッケージまで企画した商品

根本のものづくりを大切にして広げていっている

「/fan/fun」を始めたことで、異文化や異業種との交流はどのように広がりましたか。

千葉

京都職人工房では、焼き物屋さん、箔を押される職人さん、手描き友禅の職人さん、今まで知らなかった職人さんと知り合うことができ、知見は広がりました。みんな「今のままでは駄目だ」と感じていて、新しい違うことにチャレンジしていく。チャレンジしていくけれど、やっぱり根本には生業としてやってきている技術があって、生業から派生するものでやっていく。全く違うものにチャレンジするということではなく、根本のものづくりを大切にして広げていると感じました。

金子

千葉さんはお父様と一緒にお仕事をされていますが、新しい取り組みをされる際、お父様からアドバイスや感想をいただいたりしましたか。

千葉

大雑把にいうと、温かい目で見て肯定的でいてくれています。もろ手を挙げて「行ってこい」ということではないんですが。「今の時代に合った、ものづくり」に挑戦することは、本業であるお茶用の扇子づくりと両立している限りは好意的に受け入れてくれています。

金子

千葉さん自身も、異業種の人と関わる機会が増えたりされたということですが、やはり「/fan/fun」を始めてよかったと思いますか。

千葉

茶道用の扇子だけを作っていると、茶道用の扇子にしか目を向けることができなかったでしょうし、新しいことに挑戦している他の職人さんの売り場に訪れることで、新しいアイデアに触れる機会がありますので、とても刺激を受けています。

紙の扇子は丈夫と、見せてくれる千葉さん

紙の扇子は丈夫と、見せてくれる千葉さん

光にかざすと、扇骨が扇面紙の中央に綺麗におさまっているのがよく見える

光にかざすと、扇骨が扇面紙の中央に綺麗におさまっているのがよく見える

「そこまでこだわらないといけないのか」と

千葉さんにとってつくるとは何ですか。

千葉

職住一体ということで、扇子をつくることが正直あまりに身近すぎて、当たり前になっていると思います。ブランド立ち上げのように、新しいものや新しい柄をつくることがとても楽しいです。自分のアイデア次第で成功することもあれば、もうちょっと頑張っておけばよかったなという時もあり、日々のトライアンドエラーになっていますね。

金子

商品開発では、着物の商社に勤められた経験や、最近出会った異業種の方からのアイデアも活かされたりしていますか。

千葉

「勉強しなくても」というと、言い方として悪いかもしれないですが、職人工房や着物屋での経験や交流から、ある程度は知識が備わったので、助かったなと思います。今も着物の問屋さんとお付き合いもさせていただいていますので、着物の仕事も職人工房も、本当に行っててよかったなと思ってます。

つくる時に欠かせないと感じているコトやモノはありますか。

千葉

うちは父親が健在で、父親と一緒に扇子をつくっているのですが「そこまでこだわらないといけないのか」と思うことがあります。近しい存在ですので口が荒くなったりすることもあるんですが。普通に外で勤めていたら社長には「はいはい」ということでも、父親には「それはもう、ここは誰も見てないんじゃないか」ということもあります。でも父親はこだわって扇子をつくっているので、誰も見ていないところでも気を抜かない。その姿勢は見習うというか、自分の中に落とし込んでいきたいと思っています。

つくる時に1番大切にしていることはありますか。

千葉

お客さんに笑われるよりも、同業者に「こんなものをつくってるのか」といわれないようなものをつくりたいですね。

つくる時に何からアイデアを得たりヒントにしていますか。

千葉

四六時中、扇子のことを考えている訳ではないですが、何かを見ている時にふと「この柄にしたら面白いかな」と思いつくことがあります。普段ずっと扇子のことを考えている訳でもないし、無意識のうちに繋がっているので、何がきっかけになるかは分からないですけれど。

金子

日々の暮らしの中で、繋がってひらめくということですね。

千葉

そうですね。

つくることを通して理解したことはありますか。

千葉

扇子が何故このような形状になったのか、何でこういう風に削ってあるのか、形や工程の理由が分かった部分はありますね。先人の知恵が集約されていると思います。もちろん扇子の形として「成るべくして成っている」という考えは頭の中にありますが、より良い形を目指して新しい試みをすることもあります。実際試してみると、予想とは反して「やっぱり違ったよね、やらないほうが良かったな」という時もあれば、「より良くなったな」ということもありますね。実際に手を動かしてみて学ぶことも多いです。

「/fan/fun(UNRYU-GOLD)」

「/fan/fun(UNRYU-GOLD)」

知らない壁を乗り越えた

つくることを通して苦しいこと、喜びとか充実感などを感じることはありますか。

千葉

茶道用の扇子は製造・卸ですので売り場に立つことはないのですが、夏用の扇子のイベント販売時は時々売り場に立ち、自分のこだわりを説明する機会があります。お店の売り場に立って、夏用扇子の商品説明をした時「これすごいな、見たことないな」といっていただいた時は「やってよかった、伝わったな」と思います。ダイレクトにお客さんの反応を見ることができるのはいいことだと思います。

金子

苦しいと感じることはありますか。

千葉

家業に入ってから、毎日同じことをして、感覚が麻痺して嫌になったことがありました。壁を乗り越える前は辛かったです。「毎日、何で同じことをずっとやっているんだろう」と感じていましたが、いつの間にかそれがなくなりました。気づかないうちにその知らない壁を乗り越えたら、毎日仕事をしていても何とも思わなくなりました。

金子

辛いと感じていたのは年齢的にというか、今まで扇子をつくられてきた中で一時期だけですか。

千葉

辛かったのは一時だけですね。その壁を乗り越えてからは、毎日納期で追われている時はすごく神経を削られますが、過ぎてしまえば「大丈夫、去年もこれは乗り越えたし」と、経験が自信になっていきましたね。

千葉さんを取り巻く環境や未来について思っていることはありますか。

千葉

環境、特に材料の確保が難しくなっています。職人の業界や商売についても「何か劇的に変わることはないだろう」と、仕事仲間とは喋っていますね。そういいながらも、「何とかつくり続けよう」という方向に落ち着くんですが。決して前向きな状況ばかりではなく、どんなものでも厳しい状況になってきていると思っています。

金子

材料の調達が難しいというのは、竹が手に入りにくかったり、材料費自体が何らかの原因で上がっているなどですか。

千葉

1番の問題は、材料の加工に従事してくれる方が減っていることです。竹、素材は何とか入ってきますが、高齢化、従事する人の減少もあり、品質の維持が難しくなる問題もあります。もちろん手間を掛ければ良いものはできますが、誰が手間を掛けていくのか、手間賃をどこから捻出するかという問題もありますので、本当に苦しい状況になってきています。

金子

現状としては苦しいかもしれませんが、千葉さんが望む未来はありますか。

千葉

将来的にも扇子は無くなることはないと思ってはいます。テレビを見ているとスタジオにセットとして飾ってあったり、全く普段の生活からかけ離れた伝統産業の品ではない。ですので、いかにして自分達が生き残っていくかが今後の課題だと思ってます。

金子

海外の方でも扇子をインテリアとして飾られている方もいらっしゃいますし。扇子がより身近になり、より多くの人が手に取ってくれると良いですね。

洋服にも合うようにつくられた「/fan/fun(UMO)」

洋服にも合うようにつくられた「/fan/fun(UMO)」

"手芸"についてどんなイメージを持っておられますか?

千葉

手芸でイメージするのは毛糸、ボタン、こじんまりしたものというイメージがあります。でも手芸といったら大作もあるんですよね、手芸作品の大作ってどんなものがありますか。

金子

パッチワークキルトは身長よりも大きい作品があります。毎年、東京で大きいパッチワークキルトの展示会がありますし、日本各地でもやっています。百恵ちゃんもキルトされているらしいですよ、引退して。

千葉

山口百恵さん?

金子

そうです。「キルトショー」で百恵ちゃんの作品が見れたりするんですよ。

千葉

市場規模は編み物よりもキルトの方が大きいですか。

金子

市場規模はどちらかというと、パッチワークキルトの方が大きいと思います。編み物は暑いところはダメじゃないですか。パッチワークキルトは暑くても寒くても使えますし。パッチワークキルトをタペストリーのように装飾として使用するものもありますが、ベッドカバーが破れたら繕うというのが始まりなので、概念として大きく利用されているかと思います。編み物は、寒い地域では根付いていますが、編み物は解いてもう1回毛糸を使うことができるので、市場規模としてはその分小さくなる気もしますね。

千葉

SDGsになり過ぎるということですか。販売側としては消費してもらわないといけないですしね。

金子

市場規模の算出は難しいですね。ただ、100%ウールの毛糸は高いものになるので、市場規模の売り上げでいうと編み物の方が高いかもしれないです。パッチワークキルトは、いらない布を利用してもできますしね。

※国内外で事情も異なり、どちらが大きいかは諸説あります。

千葉

手芸は趣味として楽しむだけでなく、趣味からセミプロ、プロになる方もいると思います。手芸の間口は簡単過ぎてもだめだろうし、難しすぎても誰も入ってこないだろうし、入口の間口の広さが大切ではないかなと思います。ハードルが高すぎても誰も楽しめないし、低すぎてもすぐ飽きられるだろうし。

金子

手芸の入口の設定具合は重要ですね。ご意見ありがとうございます。そして、本日はありがとうございました。

作業部屋からみる庭

作業部屋からみる庭

作業部屋に通じる入口の看板とのれん

作業部屋に通じる入口の看板とのれん

かっこいいと思う手芸道具はありますか?

  • 編み針、編み棒手芸ってやっぱり僕のイメージは毛糸なので。

好きな手芸の素材はありますか?

  • 毛糸

何かつくっている時のお供みたいな物はなんですか?

  • タオル5枚糊を使うときに拭いたり、膝の上に広げてごみが散らばらないようにする扇子屋の必需品。
千葉 晃治さん

千葉 晃治 Koji Chiba

呉服店勤務を経て、家業であるお茶用扇子の販売・卸をしている「みのや扇舗」を継ぐ。

https://www.fanfun.kyoto/ https://www.instagram.com/fanfun_kyoto/
質問と回答

聞き手:金子
手芸をしない手芸事業部の社員。手芸をやりたいという気持ちだけはある。
つくり手が見えるものや場所が大好き。
手芸をしない手芸事業部の社員。手芸をやりたいという気持ちだけはある。つくり手が見えるものや場所が大好き。